「下水道は学問であり、下水道工学は技術であり、下水道事業は生涯教育である」と思っている。先ず最初の問題である学問としての対象である下水の量と質の特性は、あらゆる場所において異なり、同一の場所においても、その地域特性に類似した形態をもっているが、時系列的に見ると千差万別である。なかでも、雨水の量は自然現象である上に一般的な計画量も汚水に比べて桁外れに大きいが、不浸透面の増減状況を始め、浸透面の物理特性や貯留状況などにより大きく影響を受けるのである。水質も流集方式の違いによる差異は大きいが、分流式といえども大気汚染と関係して、処によっては正常だとは言い切れない。
汚水は、一般家庭において生じる諸種の水量・水質の原単位は、風呂の残り湯の洗濯への利用や、洗剤の種類や使い方などの生活形態のありかたにより、差異があるにしてもあまり変わらないが、時間的変動は極端である。すなわち水使用休止時間である人間の睡眠時間は無流出なのである。産業活動に起因する排水特性の原単位は、業種別、規模別に変動するだけでなく、同業者でも原料等は勿論のこと製造過程の違いによる排水に含まれるぶつ質の差異は大きい。
フランスの作家ユゴー氏が、下水は資源であると指摘したのはもうすでに一世紀も以前のことであるが、有価物の簡単にして容易な利用方法や、経済的付加価値が低いものは輸送距離が短いのが経済の原則といわれている。したがって、同じ資源と言われる石油や石炭などのように海外貿易になじまないばかりか、島々への上水輸送のようなこともあり得ない。
しかしながら、下水との付き合いが上手になっても有価物の抽出利用が人為的か自然的かを問わず、技術的にも経済的にも可能になると、汚水は元の水に再生される特異な性質を有する。また、公共用水域の水質は、科学的に造られた肥料や家庭での洗剤などにも関連するが、わずか半世紀前までは、全国のほとんどの公共用水域は清浄な水であったのである。この水の特異な性質をうまく利用して、我が国における農耕社会が何千年も続いて来たのである。
このように、下水の物理化学的特性のみでなく社会科学的側面をも併せたものが学問としてのテーマなのであろう。
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学問としての下水道
200901
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水環境の下水道